児童心理治療施設、進まぬ設置議論 背景に福島県の医師不足

福島県で医師不足が問題になっています。

国が各都道府県に1カ所以上の設置を推進する「児童心理治療施設」について、未設置の福島県では議論が進んでいない。県議会は2014(平成26)年に設置を求める請願を採択し、児童養護施設なども同様の要望書を毎年県に提出しているが、医療人材の確保などが壁となって8年間にわたって宙に浮いてきた。こうした中、県は近く潜在需要を確かめる初の実態調査を実施する。  児童養護施設など児童福祉施設の代表でつくる県社会福祉協議会児童福祉施設部会は9月に県庁を訪ね、内堀雅雄知事宛てに要望書を提出した。「心理治療施設の早期設置を」。部会側は、十分な対応ができず児童本人と周囲の子どもたちに大きな負担が生じている現状を訴えた。要望活動は16年度から7年連続となった。  鈴木栄一部会長は「心理治療施設の設置は最も優先度が高い要望だが、県に目立った動きはない」と語る。  厚生労働省は12年に策定した運営指針に「各都道府県に最低1カ所の設置を推進する」と明記した。県議会は14年の2月定例会で、東京電力福島第1原発事故による避難や健康不安が家庭に深刻な影響を与えているなどとし、「一日も早い設置を求める」との請願を全会一致で採択した。  しかし、施設の必要性などを検討する県の作業部会は19年度の設置以降、2回の開催にとどまる。8年間の進展について、県担当者は「正直、示せるものがない」と話した。  県の慎重姿勢の背景には、福島県が抱える医師不足の現実が横たわる。施設には精神科医ら医療スタッフの配置が必要になるが、医師の充実度を示す福島県の医師偏在指標は18年時点で全国43位。県は「施設を造ったとしても人材を十分に配置できるか」としており、重い課題となっている。  一方、全国では青森、岩手、宮城の東北3県を含む37都道府県で計53施設が開所済み。設置主体は自治体や社会福祉法人が多く、公設民営の施設もある。  県は「必要性について十分議論ができていないのが現状」との認識を示しており、年度内に児童養護施設や自立支援施設、里親など児童福祉の関係者に実態を聞き取り、一定の方向性を判断する考えだ。 子ども、周囲も負担重く...受け皿施設、代わりになれず  心理・精神面に問題を抱える子どもを支援する児童心理治療施設。未設置の福島県では、子どもたちは児童相談所の判断でほかの福祉施設に割り振られている。政府は「誰一人取り残さない」を理念に来春、こども家庭庁を創設するが、福島県が置かれた現実はなお遠い。適切な治療を早期に受けられない本人だけでなく、周囲の子どもや職員にも重い負担が生じている。  県南地域の児童養護施設に入所していた少女はある夜、突然声を張り上げた。  「ふざけんなあっ」  夜中の外出を制止された時だ。施設職員に暴言を浴びせた。落ち着くまで部屋に居させるのが精いっぱい。そんなことが毎日のように起きているという。  少女は親から虐待を受け、乳児院を経て2歳で養護施設に入った。成長に伴い周囲への暴力行為と暴言がエスカレート。夜通しで対応する職員の心身は疲弊し、周りの子どもは不眠と恐怖で日常生活に支障が出た。  「こうした行動は障害や疾患の影響。本当は、子ども本人が一番苦しい」と担当者。少女は学校からも突き放され、児童相談所の一時保護と施設への入所を何度か繰り返した後、精神科に入院したという。こうした事態を経験した職員らは口をそろえる。「心理治療を必要とする子どもはどの施設にもいる。彼らは今、行き場所がない」  国が2018年に行った調査によると、心理治療施設に入る子どものうち78.1%が虐待を受けた経験があり、84.2%が障害がある。福島県の児童虐待件数は過去11年間で8.8倍に増加。障害のある割合も増えた。

みんゆうネット 11/14(月) 8:22

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